決算が2日早い・手作業は半分——AIを使いこなす経理チームのイメージイラスト

決算が2日早く、手作業は半分——“AIを使いこなす1割の経理”がやっていること

月末が近づくと、経理チームが照合や入力作業に数日つきっきりになる——多くの会社で見られる光景です。
そんな経理のAI活用の実態を数字で示す調査が、2026年8月11日に米国で発表されました。
発表したのは、経理業務ソフト大手の米FloQast(フロークアスト)社です。
調査名は「The State of Accounting AI 2026」で、
対象は米国と英国の経理・財務の実務者です。
AIを使いこなす上位1割の経理チームは、月次決算が平均2日早く、手作業の時間もほぼ半分でした。
本記事では、この調査の中身と、日本の中小企業が明日から実践できるポイントを解説します。

「AIは優先事項」85%、「使いこなしている」10%

まず目を引くのは、意気込みと実行の大きなギャップです。
「AIを戦略的な優先事項にしている」と答えた経理チームは、85%にのぼりました。
一方で、「AIを幅広く使いこなしている」のはわずか10%です。
意思決定者の92%が「今後2年でAI投資は増える」と見込む一方、
「チームに実行の準備ができている」という回答は17%にとどまりました。

AIは優先事項85%・使いこなしている10%のギャップを示す図

現場の負担も浮き彫りになりました。
経理担当者の6割は、勤務時間の4割以上を照合やデータ入力などの手作業に充てています。
週の6割以上——実に3日分を手作業に費やす人も、5人に1人いました。
FloQastのマイク・ホイットマイアCEOはこの結果を、
「経理に足りないのはAIへの野心ではなく、実行だ」と総括しています。

上位1割の“成績表”——手作業63%→34%、決算8.7日→6.7日

この調査では、経理のAI活用度を5段階の「成熟度レベル」で評価しています。
手作業の比率や、自動化・統制の仕組みの整い方でレベルを判定する方式です。
最下位のレベル1(全体の10%)は時間の63%が手作業で、月次決算に平均8.7日かかっていました。
最上位のレベル5(同じく10%)は手作業が34%まで下がり、決算は平均6.7日で締まっていました。
その差は、ちょうど2日分です。
なお全体では、57%の企業が月次決算に7日以上かけています。
最も層が厚いのは中間のレベル3で、全体の38%を占めました。

手作業63%→34%・月次決算8.7日→6.7日の改善を示す対比図

レベル5の企業の中身を見ると、69%がAI導入の工程表(ロードマップ)を実行中で、
95%は月次決算の業務にAIを組み込み済みでした。
決算が2日早く締まれば、浮いた時間を分析や資金繰りの検討に回せます。
「作業の速さ」だけでなく「経営に使える時間」の差につながっている、というわけです。

差を分けたのは、高性能なツールではなく“仕組み”

興味深いのは、上位企業の共通点が「高いAIを買ったこと」ではない点です。
調査が指摘するのは、ルールと体制づくりの差です。
全体では51%の企業で、AI利用のルールが非公式のままか、徹底されていませんでした。
「いまのAIツールは統制・コンプライアンスの水準を満たす」と強く同意した人も、27%にとどまります。

導入の壁として多く挙がったのは、データセキュリティへの不安(39%)と、スキル・研修の不足(31%)でした。
上位企業はこの逆で、人の承認(サインオフ)と、監査に耐える記録を最初から業務フローに組み込んでいました。
調査に登場する米ホテル運営会社の経理幹部も、
「片手間の実験ではなく、会社の優先事項として扱ったことが成功の理由だ」と述べています。
回答者の88%は、「AIを使いこなす力は、いずれ会計基準の知識と同じくらい重要になる」とも見ています。

中小企業が明日からできる3つの実践ポイント

調査の対象は米国と英国ですが、そこから得られる示唆は日本の中小企業にもそのまま当てはまります。
とくに次の3つは、会社の規模を問わず今日から着手できます。

照合作業から自動化する・人の承認を組み込む・決算日数で測る の3ポイント図

①照合・入力など「毎月同じ」業務から自動化候補を選ぶ

調査では55%が「照合作業こそ自動化の本命」と答えた一方、実際に高度に自動化できている企業は5%でした。
裏を返せば、ここは最も効果が出やすい“空白地帯”です。
毎月同じ手順で、件数が多く、ルールを書き切れる業務から着手しましょう。
銀行明細と帳簿の突き合わせ、請求書のデータ入力、経費精算のチェックなどが典型です。

②人の承認と記録を、最初から業務フローに入れる

上位企業に共通していたのは、AIに任せる範囲を決め、人のチェックを仕組みにしていたことでした。
「AIが処理する→人が承認する→記録が残る」という流れを、導入の最初に設計しておきましょう。
権限の絞り方や承認フローの作り方は、過去記事「AIエージェントにも“試用期間”を」で詳しく解説しています。

③「決算日数」という分かりやすい物差しで測る

効果測定と聞くと難しそうですが、経理には「月次決算にかかった日数」という明快な物差しがあります。
導入前に現在の日数を記録し、3カ月ごとに見直すだけでも、投資判断の立派な材料になります。
測り方の考え方は、過去記事「導入効果を数字で示す測定3ステップ」が参考になります。

まとめ

米英の調査が示したのは、導入の有無ではなく“仕組み化”の差が成果を分ける、という事実でした。
手作業63%と34%、決算8.7日と6.7日という差は、日々の設計の積み重ねから生まれています。
経理は毎月必ず同じ業務が発生するぶん、AI活用の効果がもっとも見えやすい部門です。
まずは照合作業の洗い出しと、決算日数の記録から始めてみてはいかがでしょうか。

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