社内コンペでAIエージェントを発掘する社員と小さなロボットのイラスト

AIエージェントは“公募”で見つける——社員316人が競った韓国KB金融の社内コンペ

AIエージェントを導入するとき、「どの業務に使うか」は経営側が会議室で決めるもの、と考えていないでしょうか。
韓国の金融大手KB金融グループは、その逆をいく方法を選びました。
社員から「自分の業務に使えるAIエージェント」のアイデアを公募し、
116チーム・316人が競う社内コンペを開いたのです。
本記事では、このコンペの中身と、中小企業でも真似できる「小さな社内コンペ」の始め方を解説します。

7社から116チーム・316人——グループ横断のAIエージェントコンテスト

2026年9月3日、ソウルのKB国民銀行新館で「グループ統合AIエージェントコンテスト」の決勝が開かれました。
KB金融は、銀行・証券・保険・カードなどを傘下に持つ韓国最大級の金融グループです。
コンペには持株会社を含むグループ7社から、116チーム・316人の社員が参加しました。
まず各社ごとに予選を行い、勝ち抜いた12チームが決勝の舞台でプレゼンを行いました。

決勝に持ち込まれたテーマは、いずれも「自分の部署のこの業務で使いたい」という現場発のものでした。

  • セキュリティログの分析と異常の検知
  • 社内文書の分析、顧客の声(VOC)からのリスクの早期発見
  • 保険商品の開発支援、中古車購入のサポート

銀行・保険・カードと業種の異なる7社が同じ舞台で競うことで、
他社のうまい使い方をそのまま持ち帰れるのも、グループ横断で開催する利点です。

各社で予選、決勝は12チーム、優勝作は現場へ の流れ図

優勝は「20体のAIが相談対応を見守る管制センター」

大賞を獲得したのは、KB損害保険のチームが作った「顧客ケアAI管制センター」でした。
20体のAIエージェントが顧客相談や保険金支払いの過程を監視し、
対応の品質やコンプライアンス、査定基準との適合を点検します。
問題の兆候はスコアとして集計され、すぐに対応すべき案件から人に知らせる仕組みです。
「AIに業務を任せる」だけでなく、「人の対応をAIが点検する」という使い方が最高評価を得た点は示唆に富みます。

審査基準は3つ——「実務で使えるか」で選び、優勝作は現場へ

審査の基準は、実務への適用可能性・他の業務への拡張性・ビジネスへの効果の3点でした。
発表の巧拙ではなく、「明日から現場で使えるか」を軸に選んだことになります。
KB金融の担当者は、
「優秀なAIエージェントの現場導入を支援し、検証された事例をグループ全体に広げていく」と説明しています。
表彰して終わりではなく、
勝ち残った仕組みを実際の業務に載せ、グループ共通の資産として蓄積していく計画です。

トップダウンの千葉銀行、ボトムアップのKB——入り口は1つではない

当ブログでは、経営計画に「AIエージェント50個の稼働」を明記した千葉銀行の事例を紹介しました。
経営の意思で目標を掲げる千葉銀行が「トップダウン型」なら、
現場からアイデアを吸い上げる今回のKB金融は「ボトムアップ型」です。
さらに、社員が自分でAIアシスタントを作れる環境を配った清水建設の事例のように、
「作る人を増やす」という第3の道もあります。
どれが正解ということではなく、自社の規模と文化に合った入り口を選ぶことが大切です。

経営計画で決める と 現場から募る の対比図

中小企業でもできる「小さな社内コンペ」3ステップ

116チームを集める必要はありません。
社員が5人の会社でも、次の3ステップで「現場からAI化の種を集める仕組み」は作れます。

ステップ1: 「AIに任せたい業務」を1人1件集める

立派な企画書は求めず、
「毎月この作業に◯時間かかっている」といった困りごとを1人1件、メモ1枚で集めます。
アイデアの完成度よりも、現場の実感が乗っていることを重視します。

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ステップ2: 選ぶ基準を先に決めて公開する

KB金融の審査基準は「実務で使えるか・広げられるか・効果が出るか」の3点でした。
自社でも「毎週発生する業務か」「手順を人に説明できるか」「削減時間を数えられるか」のように、
基準を先に示しておくと、応募の質と選定の納得感が上がります。

ステップ3: 選んだ案は必ず形にして全員に見せる

一番多い失敗は、募集と表彰だけで終わってしまうことです。
選んだ1件を小さく作って動かし、結果を全員に共有するところまでが1セットです。
「あの困りごとが本当に楽になった」という実例が1つできると、
次の募集には自然とアイデアが集まるようになります。

困りごとを集める、選ぶ基準を決める、選んだ案は必ず作る の3ステップ図

注意して読む点

  • コンペ開催時点の報道で、優勝作の現場導入と効果の数字はこれからです。
  • 内容はKB金融側の発表に基づく韓国メディアの報道で、外部の検証はありません。
  • 数万人規模の金融グループの取り組みで、AI基盤や推進部署が整った前提があります。

まとめ

KB金融のコンペが示したのは、AIエージェントの使いどころを一番よく知っているのは現場だという事実です。
116チームという数字の裏には、アイデアを募り、基準で選び、
実装して共有するという再現可能な仕組みがあります。
中小企業であれば、まず「AIに任せたい業務」を1人1件集めるところから始めてみてはいかがでしょうか。
現場の困りごとこそ、遠回りに見えて一番確実なAI化の出発点です。

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