大企業とその他の企業で広がるAIエージェント格差のイメージイラスト

大企業40%・その他22%——“AIエージェント格差”の分かれ目は業務の作り替えだった

「AIを入れたのに、会社の数字が変わらない」という悩みをよく聞きます。
その理由を考える手がかりになる調査結果が、2026年8月25日に公表されました。
米コンサルティング大手マッキンゼーの年次調査「The State of AI」2026年版です。
世界97か国・1,719人が回答した、大規模なグローバル調査です。
そこから見えたのは、AIエージェントを使いこなす企業と、足踏みする企業の差が1年で大きく開いたことでした。
本記事では調査の要点と、差を分けた要因、中小企業が実践できるポイントを解説します。

大企業は27%から40%へ、その他は22%のまま

調査は2026年5月4日から6月8日にかけて行われました。
AIエージェントとは、複数の手順を自分で進めて仕事を完了させるAIの仕組みです。
年間売上10億ドル超の大企業では、エージェントを本格展開している割合が前年の27%から40%へ伸びました。
一方、それより小さい組織は22%で、前年から横ばいでした。
この1年で、活用の格差は縮まるどころか広がったことになります。

なお約9割の組織は、すでに1つ以上の業務でAIを日常的に使っています。
「AIに触れているかどうか」では、もう差がつかない段階だといえます。

AIエージェントを本格展開する企業の割合。大企業は27%から40%へ、その他の企業は22%のまま

個人は楽になったのに、会社の数字が動かない

この調査には、もう1つ見逃せない対比があります。
回答者の80%は、AIで自分の生産性が上がったと答えました。
半数は、判断の質も上がったと感じています。
ところが、AIが利益(EBIT)に少しでも寄与したと答えた組織は37%で、前年からほぼ変わっていません。
利益の5%以上をAIが生んだと答えた「高業績企業」に至っては、全体の6%しかありません。
個人の実感と会社の成果の間に、大きな段差があるわけです。

差を分けたのは「業務の作り替え」だった

では、その6%は何が違うのでしょうか。
調査が挙げる最大の違いは、業務フローの再設計です。
高業績企業の約4分の3は、AIに合わせて業務の流れを根本から設計し直したと答えています(前年は55%)。
それ以外の企業では、約4分の1にとどまりました。
既存のやり方のままAIを「道具」として足すだけでは、個人の時短で止まりがちです。
入口から出口までの流れを作り替えた企業だけが、会社の数字を動かしている——そんな構図が浮かびます。

この点は、日本の調査とも符合します。
当ブログで紹介した国内調査でも、AIの起動も出力の反映も人の手作業のままという企業が3分の2を占めていました。
道具はそろっているのに流れが昔のまま、という状態は国を問わず共通の壁のようです。

業務の流れごと作り替える企業と、道具を足すだけの企業の対比図

「買う」より「作らせる」——3社に1社がソフト購入を見送り

もう1つ、今回目立った動きがソフトウェアの「内製回帰」です。
32%の組織は、ソフトウェア製品や機能の購入を少なくとも1つ見送ったと答えました。
理由は、コードを書くAIエージェントで内製できるからです。
コーディングエージェントを本格展開している組織は約2割、大企業では31%に達します。
「買うか、作るか」の境界線が動き始めているといえます。
ただし約20%の組織は、トークン費用などAIの運用コストが利用の制約になったとも答えています。
「作らせれば安上がり」と単純に言えないことも、あわせて押さえておきたい点です。

注意して読む点

この数字を実務に持ち込む前に、4つの前提を確認しておきます。
第一に、この調査の「小さい組織」は年間売上10億ドル未満を指します。
日本でいう中小企業より、はるかに大きな会社も含まれる区分です。
国内の小さな会社の実態は、22%よりさらに低いとみるべきでしょう。
第二に、「本格展開」は回答者の自己申告で、厳密な共通基準はありません。
第三に、調査元のマッキンゼーはAI導入支援を事業とする立場でもあります。
第四に、雇用の数字です。
39%が今後1年でAIによる人員減を見込む一方、過去1年に実際に減ったと答えた組織は14%でした。
見込みが実績を大きく上回っており、悲観の先走りは禁物です。

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中小企業が学べる3つのポイント

調査が示す教訓は、規模の小さい会社にこそ生かせます。
ポイントは次の3つです。

  • 道具を足す前に、業務を1つ選んで入口から出口まで流れを作り替える
  • 効果は個人の実感ではなく、時間や件数など会社の数字で測る
  • 決裁が速い身軽さを生かして、小さな作り替えを速く繰り返す

最初の1業務は、毎週くり返す定型的な仕事が向いています。
効果の測り方は、導入効果を数字で示す測定3ステップの記事で詳しく解説しています。
大企業の40%という数字は、組織を作り替える手間を1年かけて積み上げた結果です。
少人数の会社なら、同じ作り替えを1週間で試すこともできます。
出遅れと嘆く場面ではなく、身軽さを強みに変えられる局面です。

中小企業がAIエージェントで成果を出す3つのステップ図

まとめ

マッキンゼーの2026年版調査は、AIエージェント活用の格差が1年で広がったことを示しました。
大企業は27%から40%へ伸び、その他の組織は22%で足踏みしています。
ただし差の正体は、資金力や道具の性能ではありません。
AIに合わせて業務の流れを作り替えたかどうかが、成果の分かれ目でした。
個人の生産性向上で満足せず、1つの業務の入口から出口までを見直す。
その小さな一歩が、22%の側から抜け出す近道になるはずです。

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