24時間365日のAI受付——深夜の住宅の問い合わせにAIエージェントが応対するイメージ

深夜の「家を建てたい」を逃さない——創業60年の住宅会社がAIエージェントで挑む“24億円”

住宅を検討する人の多くは、モデルハウスに足を運ぶ前にまずウェブサイトで情報を集めます。
そして、その検討時間の多くは平日の夜や休日——つまり住宅会社の営業時間外です。
大阪府守口市に本社を置く敷島住宅は、この「営業時間外の見込み客」を逃さない仕組みづくりに乗り出しました。
2026年7月31日、セールスフォース・ジャパンは、
同社がAIエージェント「Agentforce」を導入したと発表しました。
掲げる目標は、フォーム離脱率の改善による月平均50件の見込み顧客の獲得と、年間24億円規模の売上創出です。
本記事では、敷島住宅の取り組みの中身と、中小企業が自社に応用できるポイントを解説します。

創業60年の住宅会社がぶつかった2つの壁

敷島住宅は1962年創業の住宅総合企業です。
大阪・京都・滋賀の京阪神エリアで、注文住宅や分譲住宅の設計・施工、不動産流通、リフォームなどを手がけています。
介護・福祉施設の運営も含め、地域の暮らしに密着した事業を60年以上続けてきた会社です。
同社は以前からSalesforceの顧客管理製品を使い、営業やマーケティングのデジタル化を進めてきました。
それでも解消しきれない壁が2つありました。

1つ目は、ウェブサイト経由の問い合わせへの対応スピードです。
問い合わせが増えるほど初動が遅れがちになり、せっかくの検討者を逃すリスクが高まっていました。
2つ目は、営業活動の属人化です。
個々の担当者の経験と勘に頼る進め方では、対応の質にばらつきが生まれてしまいます。
この2つの壁への答えとして選ばれたのが、AIエージェントでした。

24時間365日の「AI受付」——Agentforceの役割

Agentforceは、ウェブサイト上で顧客と対話するAIエージェントです。
住宅購入やリフォームに関する問い合わせに、24時間365日体制で自動で応答します。
深夜でも休日でも、検討者が「聞きたい」と思った瞬間に一次対応できるのが最大の強みです。
電話やメールと違い、回答までの待ち時間が発生しないため、検討の熱が冷める前に次の一歩を案内できます。

夜間・休日の問い合わせにAIが即時に一次対応し、営業は関係構築に集中する役割分担図

注目したいのは、フォーム離脱への向き合い方です。
同社は、問い合わせフォームまで来た人が入力せず離脱する背景に、3つの摩擦があると分析しています。
知りたい情報が見つからない、入力の手間が面倒、個人情報を入れることへの不安——の3つです。
AIエージェントとの対話であれば、必要なやり取りだけで自然に相談を始められます。
獲得した見込み顧客の情報は既存の顧客管理システムに引き継がれ、その後の育成にも活用されます。
営業担当者は一次対応から解放され、より深い関係構築に集中できるようになります。
あわせてデータ分析基盤のData 360やTableauも導入し、蓄積したデータの活用も強化します。

「月50件・24億円」——目標を数字で先に掲げる

今回の発表で目を引くのは、目標が具体的な数字で示されている点です。
フォーム離脱率の改善によって、月平均50件の見込み顧客を獲得する。
問い合わせから商談への転換率を高め、年間24億円規模の売上創出と4.8億円の利益貢献につなげる。
いずれも今後の達成を目指す目標値ですが、「AIを入れて何を変えるのか」が明確です。

敷島住宅がAgentforce導入で掲げる目標——月50件の見込み顧客・売上24億円・利益4.8億円

AIを導入したものの、効果を数字で説明できない企業は少なくありません。
導入前に目標数字を決めておけば、効果検証も追加投資の判断もぶれなくなります。
敷島住宅のように「何の改善で・何件・いくら」まで分解しておくと、達成度の確認も簡単です。
効果の測り方は、別記事「導入効果を数字で示す測定3ステップ」でも詳しく解説しています。

中小企業が学べる3つのポイント

敷島住宅の取り組みから、規模の小さな会社でも今日から応用できるポイントを3つに整理します。

中小企業が学べる3つのポイント——機会損失を数える・AIと人の役割分担・目標を数字で決める

① 営業時間外の問い合わせを「機会損失」として数える
自社サイトへのアクセスや問い合わせが何曜日・何時に多いかを、まず確認してみてください。
夜間や休日の問い合わせへの返信が翌営業日以降になっているなら、そこが最初の改善余地です。
問い合わせフォームの入力項目が多すぎないかの点検も、費用をかけずにできる第一歩です。

② AIに一次対応を、人に関係構築を任せる
敷島住宅の設計は、AIがすべてを担うものではありません。
一次対応と見込み顧客の育成をAIに、深い提案と関係構築を人に振り分ける役割分担です。
商談記録の作成をAIに任せた工作機械メーカーの事例とも共通する、成果の出やすい型といえます。

③ 目標を数字で決めてから導入する
「月◯件の見込み顧客」「売上◯円」のように、達成したい数字を先に決めましょう。
数字が決まっていれば、ツール選定も、導入後の振り返りも具体的になります。

まとめ

敷島住宅の事例は、AIエージェントが一部の大企業だけのものではないことを示しています。
創業60年の地域密着の住宅会社が、営業時間外の問い合わせ対応という身近な課題からAI活用を踏み出しました。
月50件・24億円という数字を掲げ、効果を測れる形で始める姿勢は、規模を問わず参考になるはずです。
まずは自社のサイトに「夜の問い合わせ」が眠っていないか、数えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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