2026年8月31日、ChatGPTで大規模な障害が起きました。
障害報告サイトへの報告はピーク時に1万件を超えたと報じられ、
業務向け機能を中心に「会話が読み込めない」状態が続きました。
同じ日にはMicrosoft Outlookの障害も報じられ、業務への影響が広く話題になりました。
AIエージェントや生成AIに業務を任せる会社が増えるほど、
外部サービスの障害はそのまま自社の業務停止につながります。
本記事では、AI頼みの業務を「止まった日」も回すための3つの備えを解説します。
8月31日に起きたこと——障害は自社では直せない
米OpenAIのChatGPTでは、指示に応答しない・過去の会話が読み込めないといった不具合が報告されました。
とくに業務向けの「Work」機能を使う有料プランの利用者への影響が大きかったと報じられています。
OpenAIは問題を特定して対策を講じ、サービスは復旧しましたが、詳しい原因は発表されていません。
ここで大事なのは、クラウド型のAIサービスの障害は、利用者の側では直せないという事実です。
復旧の作業は提供元に委ねるしかありません。
復旧を待つ間に目の前の業務をどう回すかだけが、自社で決められることです。
「止まる日」への備えがある会社は2割
帝国データバンクが2026年6月に公表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」によると、
BCPを策定している企業は21.4%で過去最高でした。
それでも中小企業に限ると18.3%にとどまります。
想定されているリスクも自然災害の67.8%が中心で、
情報セキュリティ上のリスク50.2%、設備の故障37.9%が続きます。
「使っているAIやクラウドが止まる」という事態は、多くの会社でまだ備えの対象になっていません。
同じ調査では、BCPを策定しない理由の1位は「策定に必要なスキル・ノウハウがない」の42.2%でした。
ただ、AIの障害への備えに限れば、分厚い計画書は必要ありません。
A4一枚のメモと、年に2回の小さな練習から始められます。
今日からできる3つの備え
ここからは、半日あれば形になる3つの備えを順に見ていきます。

備え1 止まると困る業務を3つだけ選ぶ
まず、AIや自動化ツールに任せている業務を書き出します。
すべてに備える必要はありません。
「その日のうちに締切が来る」「顧客に約束している」業務から、3つだけ選びます。
選んだ業務ごとに、止まったら誰がどのやり方で代行するかを1行ずつ書き添えます。
「見積書の下書き→営業担当が過去の見積を流用して作る」といった粒度で十分です。
備え2 手作業に「戻れる道」を残す
AI化した業務ほど、以前の手順書が捨てられがちです。
しかし障害の日に効くのは、まさにその古い手順書です。
AI化する前のマニュアルは、廃棄せず「非常用」フォルダに移して残してください。
また、AIエージェントへの指示書を目的・入力・手順・判断基準・例外の5項目で書いてあれば、
それはそのまま人間用の非常時マニュアルにもなります。
注意したいのは、人の側が手順を忘れていくことです。
AIに任せて半年もたつと、「前はどうやっていたか」を誰も思い出せなくなります。
半年に1回、1件だけ手作業で処理してみる「避難訓練」をおすすめします。
手順書の古びた箇所も、その1件で見つかります。

備え3 「切り替えの合図」を決めておく
障害は、全面停止よりも「なんだか遅い」「一部だけ失敗する」という形で静かに始まることが多いものです。
現場が異変を感じてから手作業に切り替えるまでの判断を、曖昧にしないことが大切です。
決めておくのは次の3つです。
- 使っているサービスの公式の稼働状況ページを控え、最初にそこを確認する
- 手作業への切り替えを判断する人を、1人決めておく
- 復旧した後に、障害の間の処理を数え直す(未処理と二重処理の点検)
とくに3つ目は忘れられがちです。
障害中にAIが途中まで処理した案件を放置すると、「送ったつもりで送っていない」事故のもとになります。
この点検は、権限設計と承認フローの記事で扱った内容と地続きです。
「お金が動く・社外に出る業務は人が確認する」という基準と、セットで整えてください。

注意して読む点
1つ目に、8月31日の障害の詳しい原因は、執筆時点で公表されていません。
本記事の障害の状況は、海外メディアの報道に基づく情報です。
2つ目に、帝国データバンクの調査は自然災害などを含むBCP全般についてのもので、
AIサービスの障害への備えを直接尋ねた調査ではありません。
3つ目に、障害の頻度や復旧の速さ、補償の条件はサービスごとに大きく異なります。
まずは自社が使っているサービスの利用規約と、公式の稼働実績のページを確認してください。
まとめ
AIに業務を任せることと、AIしか手段がない状態になることは別です。
止まった日に手で回せる会社は、ふだんは安心して任せる範囲を広げられます。
今回の3つの備えは、AIを「任せない理由」ではなく、「もっと任せるための土台」です。
8月31日のような日は、これからも必ずやってきます。
次の障害の日に、あわてず「では手動でいきましょう」と言えるかどうかは、今日の30分の書き出しで決まります。
まずは、止まると困る業務を3つ挙げるところから始めてみてください。
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